平安時代『美女』の基準
はじめに
平安時代(およそ794〜1185年)は、貴族文化が花開いた時代。現代の感覚とはずいぶん違う「美」のルールがあり、宮廷文学や絵巻(たとえば『源氏物語絵巻』)にその理想像が繰り返し描かれています。ここでは「当時の美女はどんな条件を満たしていたのか」を、男性目線でわかりやすく解説します。目安にするのは実際の化粧・服飾・絵画表現の記録です。
平安美人の主要ポイント(押さえておくべき6つ)
以下は平安貴族の女性に求められた典型的な特徴です。これを知れば、古典や絵巻を読むときに「本当に美しい」とされていた像が見えてきます。

1) 白い肌(白粉:おしろい) — 「美白」は命
顔全体を白く厚塗りする「白粉」が基本。白い肌は屋内での生活(窓が少なく明かりが暗かった)や、労働をしない身分の象徴でもありました。単に美しいだけでなく「高貴さ」を示すサインです。化粧の主役は白、赤、黒の三色で構成されていました。ポーラ文化研究所+1
2) 長い黒髪(垂髪:たれがみ/おすべらかし) — 伸ばすほどステータス
床に届くほど長い黒髪は平安女性のアイデンティティ。髪の手入れに時間と金がかかるため、長い髪=余裕のある生活=魅力、という図式が成立していました。髪はそのまま色情感や季節感の表現にも使われます。ThoughtCo
3) 引き眉(引眉:ひきまゆ/hikimayu) — 眉は抜いて描く
自然の眉を抜き、額のやや上方に小さな眉を描く「引き眉」が流行。顔の表情を控えめに見せ、気品と匿名性(顔を特定させない)を演出しました。絵巻の人物に見られる様式化の一因です。ウィキペディア
4) 小さな口と紅(おちょぼ口・紅) — 口元は控えめに
唇は小さく赤く縁取り、控えめな口元が美とされました。唇の見せ方にも礼儀や成熟の意味合いが込められており、派手さよりも「わび・さび」の美意識が優先されます。ポーラ文化研究所
5) お歯黒(ohaguro) — 黒い歯(成人・既婚の象徴)
歯を黒く染める「お歯黒」は成人・既婚・高位を示す慣習の一つで、平安末以降に盛んになりました。見た目の違和感は現代の我々には大きいですが、当時は「黒=上品」「黒はかえって艶やか」という美的感覚がありました。ウィキペディア+1
6) 絵画的な理想:引目鉤鼻(ひきめかぎばな) — 「描かれた」美女の型
平安の絵巻や大和絵には、目を一本線のように描き、鼻を「く」の字で示す様式(引目鉤鼻)が多用されます。これは実際の顔立ちの写実ではなく「宮廷的な理想」を示す記号。文学で読む人物像と絵の像がずれる理由の一つです。ウィキペディア
なぜこれらが「美」だったのか — 社会と機能の視点
平安の「美」は単なる好みではなく、身分・暮らし方・文学的な価値観と結びついています。室内中心の生活、夜は燈(ともしび)の暗さ、物語を読み聞かせる文化。こうした環境の下で「白い顔」「長い髪」「重ねの衣」などは実用的かつ象徴的な魅力でした。十二単に見られる「かさねの色目」も季節感や教養を示すセンスの見せどころで、服の色合わせで教養をアピールしていたのです。ウィキペディア+1
絵巻(視覚)と日記・物語(文章)のギャップ
絵巻の「顔」の単純化(引目鉤鼻)と、日記や物語に書かれる微妙な描写(匂いや所作、衣の重なり具合の描写)は、当時の読む人/見る人に応じたメディアの違いを示します。絵は理想化して記号化することで、読者が自分の想像を重ねられる余地を残しました。一方で日記や恋文では「匂い」「髪の手ざわり」など、より具体的な「接触」の情報が重視されます。三省堂WORD-WISE WEB -Dictionaries & Beyond-
古典で知っておくべきこと
-
見た目だけで評価しない:平安の「美」は身分や教養の合図。物語の「惹かれる理由」は外見より所作や教養にあることが多い。
-
古典女子に惹かれるなら「所作」に注目:奥ゆかしさ、礼儀、言葉遣い、着物の扱い方――これらが平安的魅力の本質です。
-
デートでのヒント(現代流アレンジ):清潔感(白い肌の価値が今の清潔感に対応)、髪や身だしなみの手入れ、着こなしのセンス。外観より「余裕」と「気配り」を持つことがモテる近道です。
-
絵巻を見るコツ:顔の描き方が様式化されている点を意識すると、誰が重要人物か、どの服が季節や地位を表すかが読み取れます。ウィキペディア+1
さいごに 時代を超えた「読み方」を楽しむ
平安の「美女」基準は、現代の基準とは大きく異なりますが、背景を知ると古典はぐっと面白くなります。単に「見た目」ではなく、生活、季節感、教養が絡み合った総合芸術としての「美」を楽しんでください。作品を読むときは、表面的な顔立ちだけで判断せず、所作や衣装、匂いの描写といった「非可視の魅力」にも目を向けると、より深い味わいが出てきます。ThoughtCo
ふくよかな女性がモテるとされていたとか…現代とは違う価値観による美の変化は、未来ではどのように変化をもたらすのでしょうか?
前回の記事は→→こちら←←から タイトル:スタッフとして嬉しかった話






















